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『敬語の指針』より ― 謙譲語Ⅰ・Ⅱと美化語

自分の使っている言葉が正しい敬語か迷ったとき、私が参考にしている資料の中に、文部科学省文化審議会の『敬語の指針』があります。
国が出しているものですが、国民の言葉遣いを統制するようなものではありません。
むしろ、時代の流れに沿って、「こちらが正しいと言われている使い方だが、こうしてもいいんだよ」という、複数の選択肢を提示している箇所もあります。
数年前、敬語が「尊敬語・謙譲語・丁寧語」の3種類から、5種類に増えたことをご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こちらを定めたのも文化審議会です。
3種類だった敬語に、更に2種類も加わるとなると、いったいどれだけややこしくなっているのでしょう!?
しかし、勇気を出して5分類の世界に踏み込んでみると、これがなかなか使いやすそうなのです。
5つの敬語とは、以下になります。
1)尊敬語 ―― 「いらっしゃる」「おっしゃる」型
2)謙譲語Ⅰ ―― 「伺う」「申し上げる」型
3)謙譲語Ⅱ ―― 「参る」「申す」型
4)丁寧語 ―― 「です」「ます」型
5)美化語 ―― 「お酒」「お料理」型
例えば、お客様に電話をかけることについて「お電話いたします」と言う場合。
自分の行為に「お」をつけるのは正しいかどうか、悩むところですが、5番の美化語と考えれば解決します。
自分を高めているのではなく、相手に対して、より丁寧に話すための「お」ということです。
また、以下の2つはどうでしょうか。
例1:植木に水をあげる
→植物に「あげる」と丁寧な言葉を使うのはおかしいのではないか?
例2:〇〇は休暇をいただいております
→休暇は自社が与えているものなのに、取引先に「いただく」と言うのか?
この2つの疑問は、3番の謙譲語Ⅱ「自分の行為を話の相手に対して丁重に述べるもの」と考えれば解決されますね。